softmatter

Last-modified: 2008-12-26 () 17:19:51 (2429d)

ソフトマター物理学とは?

ソフトマターとは柔らかな物質のことを指します。物理的な定義によるとマクロな スケールとミクロなスケールの中間的なスケールに独自の構造とダイナミクスを持つ 系であり、ミクロからマクロに渡る広いスケールに豊富な時空の階層構造を持つもの をいいます。たとえば、高分子、コロイド、液晶、エマルジョン、粉体などがソフト マターに属します。それぞれの物質についての研究は古くから行われてきたのですが、 近年、これらの物質をまとめて、ソフトマターと呼び、これらの示す多彩な物理現象 を統一的に理解しようとする試みがなされています。ちなみに、ソフトマターという 言葉はノーベル賞を受賞した P.G. de Gennes がその受賞講演で使用してから、広く 用いられるようになりました。このなかでも、私たちは高分子を対象としたガラス転移、 結晶化による構造形成、ガラスダイナミクス、dewetting 現象になどに興味を持って 研究を進めています。

研究内容について質問があればいつでもどうぞ *1

結晶化

高温の液体状態ではランダムな構造をとっている高分子の鎖が融点以下では規則正し い結晶構造を持った状態へ転移します。この現象が結晶化です。この際、液体状態の 高分子鎖は互いに絡み合っていますが、如何にこの絡み合いを解いて、規則正しいラ メラ構造(層状構造)を取りうるのかという物理的な機構を理解することが目標とな ります。

ガラス転移

結晶化に対して高温からの冷却により、結晶化せずに、ランダムな構造を保ったまま 運動性のみが消失したガラス状態へ「転移」することがあります。この現象はガラス 転移と呼ばれ、高分子に限らずランダム系で一般に見られる現象です。この物理的な 機構は未だに明らかにされておらず、物性物理学に残された難問の一つと考えられて います。

ガラスダイナミクス

ガラス状態では主な運動性が消失しているため、局所的な運動性のみが存在します。 そのため、液体状態とは異なり、エイジング現象(老化現象)という特殊な緩和現象 を示します。このガラス状態でのダイナミクスはメモリー効果や若返り効果と呼ばれ る大変奇妙な現象を伴うことが知られており、その機構解明に興味が持たれています。

dewetting (撥水)

高分子液体薄膜を基板上に作製すると、条件によっては高分子が凝集し、大きな液滴 を作ろうとします。この際、多彩なパターン形成が見られます。このようなパターン の形成と高分子のダイナミクスは密接に関係していると考えられています。


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